小池百合子さんの街頭演説を追いかけてみた(前編)
東京都知事選挙、それは4年に1度の政治の祭典
私は東京都民ではないが、畠山理仁さんの著書「黙殺 報じられない無頼系独立候補たちの戦い」を読んで、以前から東京都知事選挙に強い関心を抱いてきた。2024年の選挙で独立系候補に会いに行きたいとワクワクして、漫遊の計画を練っていた。
一方で、小池東京都知事の演説を自分の目で一度見てみたかった。Arc Timesや一月万冊、デモクラシータイムスといったYouTube系メディアの報道をきっかけに、石井妙子さんの「女帝 小池百合子」を読んだ。生半可なホラーよりも恐ろしい小池さんにまつわるエピソードに戦慄しつつ、彼女の「美声」で紡がれる「物語」がどれほど魅力的に聞こえるのか、実際に体感してみたいと思った。
これは、2024年東京都知事選折り返しの6月30日と7月1日で、地方住みの一般市民が小池さんを追いかけてみた記録である。

『女帝 小池百合子』みんな読んで!怖いよ!
6月30日 17時 北千住駅西口デッキ上
小池さんは他の候補よりも街宣の回数が少なく、土曜日にも関わらず演説を聞けるのはこの1回だけだった。阿佐ヶ谷で蓮舫さん、高円寺で小林さんの演説を聞き、1時間かけて北千住に向かった。

高円寺での小林弘さん街頭演説。愛犬がめちゃかわ。
北千住に着いたのは17時ちょっきり。地下鉄からデッキに出ると、さっそくビラを配っている支援者がいたがやる気が全くないように見えて驚いた。デッキは中央が大きな柵で囲われており、ぱっと見た感じは「選挙の演説」ではなく「野外音楽フェス」の様相だった。しかし、少し見渡しただけでもたくさんの警察と黒服のSPが目に入り、これが楽しいフェスではないことを物語っていた。

打って変わって、北千住はこのものものしさである。
柵の中に入るには、荷物検査と身体検査が必要だった。カバンの中を見せて、金属探知機で腰回りを確認された。柵の中は人で溢れており、混沌としていた。小池さんの姿は全く見えず、声も全く聞こえない。柵の中でも若いSPが無表情で立っており、目を光らせていた。SPを初めて見た田舎者の私は震え上がった。
演説が聞こえず困り果てて立っていると、柵の外を「外苑伐採小池百合子」と書いたプラカを掲げたプロテスターが無言でグルグル歩いていることに気がついた。また、柵の中にも前方で「天下り百合子」と小池さんに向かって堂々と掲げているプロテスターがいた。こんなものものしい雰囲気の中で、小池さんの支援者もいる中で、対抗するのはすごい勇気だ。彼らが警察に連れていかれてしまったら、どうしようと私は怖かった。

小池さんと「天下り百合子」のプラカ、そして黒服
気がつくと私の隣におじいさんが立っており、「聞こえないなぁ…」とぼやいていた。「聞こえないですね」と話しかけてみると、おじいさんは小池さんを応援する資料を持ってきたんだとA4の紙を見せてくれた。その紙には小池さんが自らの知事としての給料を削っており、他の道府県の知事よりも給料が格段に低いことをランキング形式で示したテレビ画面が印刷されていた。おじいさんは「『アッコにおまかせ』でこれを見て、小池さんを応援しているんだ」と嬉しそうに私に言った。おじいさんはテレビの情報しか知らないんだと思い、小池さんが自民党や統一協会と繋がっていること、外苑の木を切って無駄遣いをしていることをどうやって伝えようと考えながら、まずは物証だと思い「その紙、写真撮って良いですか?」と私は言いかけた。
すると急に近くにいた若い男性が、「小池さんはプロジェクションマッピングで48億円も使ってるんですよ、この動画を見てください」「おじいさんは年金生活ではないの?税金がこんなことに使われて許せないと思わないんですか?」とカットインしてきた。おじいさんは最初は驚いていたが、徐々に「そんなことない、小池さんは頑張っている」と怒り始めた。私があわあわしていると、無表情の若いSPが2人の間に入った。それでもおじいさんはしばらく怒っていたが、SPに睨まれておとなしくなった。
私は、小池さんの暴走は報じないメディアの責任が大きいと考えている。だから、テレビしか見てないおじいさんのことを責められないと思った。もちろん、きちんと言ってくれた若い男性も偉いと思った。どちらも真剣に政治のことを考えている人たちなのにと、とても悲しくなると同時にきちんと報じないメディアに対する憤りを感じた。
AERAの記事によると、確かに小池さんの給与は全国の知事の中で1番安い。でも、彼女は他に収入源があるんじゃないかと疑ってしまう。「女帝」にも知事をやりながら民間企業の社外取締役をしていたことが書いてあった。しかも2番目に給与が安いのは沖縄県の玉城さんだった。辛い。
演説終了後もオイシイ、選挙漫遊
そうこうしているうちに小池さんの演説は終わり、演説後にグータッチして回っていた様だがどこにいるんだかさっぱり分からないうちにグリーティングも終了した。結局、小池さんの演説内容は全く分からなかった。柵の出口で人の良さそうな支援者の方に「聞こえなかったので、また聞きにきたいのですが次の予定は決まっていますか?」と聞くと、「次は私も分からないんです、今日も2、3日前に急に決まって…」と言われた。こんな大規模な警備の街宣が、そんな急に決まるものなんだろうか?

小池さんのガラス張りの街宣車 通称「金魚鉢」。
名残惜しくてデッキの隅でやるせなく突っ立っているとミスターサンデーの番組スタッフに取材を申し込まれた。「音が聞こえなかったから感想は話せない」と伝えた上で、「小池さんの次の演説予定は分かりますか」と聞くと「明日蒲田でやるみたいです」と教えてくれた。「小池さんの勢いはどうですか」と聞いてみると、「立場上そういうことは答えられない」と断わられた。
ミスターサンデーのスタッフが私への取材を諦め去っていくと、今度はつばさの党の街宣車がデッキ下に近づいて来た。北千住の街宣は2階のデッキなので、つばさの党の妨害はそれほど気にならなかったが、やはり異様な雰囲気だった。デッキからつばさの党の車を見下ろしていると、2人組の女性が「つばさの党が来た!」と近くに駆け寄ってきた。ちょうどつばさの党はデッキの下に入ってしまったので、「下に潜っちゃいました」と教えてあげると2人は礼儀正しく「ありがとうございます」とお礼を言ってくれた。

ダッシュボードめっちゃ散らかってない?
先ほどのおじいさんの件があったので恐る恐る話しかけてみると、2人はなんと地元の選挙漫遊師で小池さんを前方で見ることができたそうだ。仲間を見つけて嬉しくなった私は、2人をお茶に誘いその後3時間近く選挙や政治談義をした。お2人は横田一さんや鈴木エイトさん、畠山理仁さんを応援しており、「選挙現場で話しかけたらすごく良い人で、こんなことを教えてくれたよ」と教えてくれた。ぐぬぬ、東京楽しそうで羨ましい!!そして、「小池さんの警備はおかしい、あんな金属探知機は空港か皇室の一般参賀のときくらいだ」と怒っていた。翌日18:30に蒲田で小池さんが街宣をやる事、そしてそのまま新幹線で帰るなら品川が近いことを教えてくれた。めちゃくちゃ楽しかった。本当にありがとうございました。
小池さんの街宣は明らかにおかしくてヒリヒリしていた。選挙漫遊師でもありヒルマニアでもある私にはオイシイ現場だ。私は翌日も小池さんの街宣を見に行くことにした。

宿への帰路でおときたさんみっけ
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